料理をする際に使うオイルとして、サラダ油をメインに使っているひともいれば、そもそも、あまり使わないひともいるかと思います。でも、サラダ油に関しては「体に悪い」「危険」という言葉も目につくと、このまま使い続けていいのか、気になるところでもあるかと。
実際、サラダ油そのものが「絶対にダメ」というわけではなく、大切なのは種類の選び方と、使う量や頻度です。なぜ「体に悪い」と言われるのか、その噂はどこまで本当なのかを整理して、自分に合う付き合い方を選べるようにまとめてみます。
この記事でわかること
- サラダ油が「体に悪い」と言われる5つの理由
- よく聞く噂が、どこまで本当なのか(認知症・トランス脂肪酸など)
- 自分に合う3つの付き合い方
- サラダ油の代わりになる油と、上手な使い方
目次
サラダ油は体に悪い?結論は「種類・量・頻度」

先に整理すると、サラダ油は「絶対にダメな油」ではありません。ただ、大量生産タイプの油をたっぷり使い続けるのと、つくられ方を見て選び、適量を使うのとでは、油との付き合い方がだいぶ変わってきます。どのくらいの頻度で使うかも、人それぞれです。
そもそも「サラダ油」という名前で、ひとくくりに悪者にしてしまうのはすこし正確ではありません。「サラダ油」はJAS(日本農林規格)で定められた精製油の総称で、原料にはなたね・大豆・とうもろこし・米(米ぬか)など何種類もあります。なかには圧搾でしぼり、湯洗いなど製法にこだわった「なたねサラダ油」や「こめサラダ油」もあるんです。
つまり、気をつけたいのは「サラダ油」という言葉そのものではなく、大量生産のために溶剤で抽出した精製油を、かたよってたくさん使い続けることのほう。ここを分けて考えると、必要以上に怖がらずにすみます。
言われる理由を、次の章で成分とつくられ方から順番に整理してみます。理由がわかると、何に気をつけて選べばいいか、そして自分はどのくらい使いたいかが見えてきます。
なぜ「サラダ油は体に悪い」と言われるの?5つの理由を整理

サラダ油が「体に悪い」と言われる背景には、おもに次の5つの理由があります。ここから、成分とつくられ方に分けて整理してみます。
① 酸化しやすい脂肪酸が多い
サラダ油に多いリノール酸(オメガ6系)は、熱や光、時間で酸化しやすい性質があります。酸化した古い油は、風味も落ち、体にもうれしくありません。
② 高温・薬品を使った精製でつくられることが多い
大量生産される油の多くは、ヘキサンという溶剤で原料から効率よく油を抽出し、高温で精製してつくられます。この過程で、原料がもともと持っていた栄養分は減っていきます。
③ トランス脂肪酸が気にされる
油を高温で精製する工程で、トランス脂肪酸がわずかに生まれることがあります。摂りすぎると健康への影響が指摘される成分です。
④ オメガ6に偏りやすい
サラダ油は加工食品や外食にも広く使われていて、知らないうちにオメガ6を摂りすぎ、オメガ3とのバランスがかたよりやすいと言われます。
⑤ 原料が遺伝子組み換えのことがある
大豆やとうもろこし、なたねは、大量に流通する輸入原料だと遺伝子組み換えのものが使われている場合があります。気にする方にとっては選びたいポイントです。
ここで知っておきたいのが、悪者にされがちなリノール酸(オメガ6)も、じつは体に欠かせない「必須脂肪酸」だということ。体の中でつくれないので、食事から摂る必要のある大切な栄養でもあります。問題は「ある」か「ない」かではなく、酸化や、摂りすぎによるかたよりのほう。同じ成分が、「気をつけたい理由」でもあり「必要なもの」でもある、というわけです。
そしてもうひとつ。ここで挙げた心配ごとは、溶剤抽出でつくられた精製油ばかりを、たっぷり使い続ける場合に大きくなるもの。圧搾でしぼった油を適量使うなら、過度に身構えなくてだいじょうぶです。
サラダ油の噂はどこまで本当?煽られがちな話を事実で確かめる

サラダ油の話には、強い言葉で不安をあおるものも見かけます。気になる噂を、わかっている事実と照らし合わせてみます。
「サラダ油で認知症になる」は本当?
「サラダ油に含まれるヒドロキシノネナールという成分が、認知症の原因になる」という話を見かけることがあります。けれど、この成分と認知症や病気との関連が語られることはありますが、いまのところ人への直接の影響がはっきり確認されているわけではありません。この成分は酸化した古い油に関連して語られるもので、いまの時点で「サラダ油を使うと認知症になる」と決めつけるのは、行きすぎだと言えます。
とはいえ、酸化した古い油や、揚げ物に何度も使い回した油は、風味の面でも体の面でもうれしくありません。「認知症になる」と恐れるより、油を新鮮なうちに使いきるほうが、ずっと実用的な心がけだと思います。
「サラダ油はトランス脂肪酸が多い」は本当?
トランス脂肪酸というと、まずサラダ油を思い浮かべる方もいますが、多く含まれるのはマーガリンやショートニング、それらを使った加工食品のほうです。植物油にもごく微量は含まれますが、量はずっと少なめ。農林水産省によると、日本人が食品から摂るトランス脂肪酸は1日あたり平均0.9g台で、総エネルギーの0.5%弱。世界保健機関(WHO)が目安とする「1%未満」を、平均的には下回っています。
もちろん、加工食品や外食にかたよれば摂取量は増えるので、ゼロではありません。ただ、「サラダ油=トランス脂肪酸が多くて危険」と一律に考えるのは、事実とすこしずれている、というのが正確なところです。
「オリーブオイルは酸化しやすいから加熱に弱い」は本当?
これはよくある誤解です。実際は逆で、オリーブオイルは酸化に強い油とされています。主成分のオレイン酸(一価不飽和脂肪酸)は熱に比較的強く、エクストラバージンオイルにはポリフェノールやビタミンEといった抗酸化成分も含まれるからです。日本経済新聞も「オリーブオイルに関する誤解」のひとつとして紹介しています。
ただ、揚げ物のような高温調理には、また別の見方があります。これは後の「代わりになる油」の章で触れます。
サラダ油との付き合い方は3つ|選ぶ・量や頻度を見直す・代える

「体に悪いサラダ油」を避けたいと思ったときの、正解はじつはひとつではないんです。付き合い方には、大きく3つの方向があります。全部やらなくても、いまの自分に合いそうなものから、組み合わせて選んでいけば、だいじょうぶなんです。
① 良い油を選ぶ……製法や原料にこだわった油に替える
② 使う量や頻度を見直す……たっぷり使う場面を、すこし減らしてみる
③ 料理ごとに油を代える……用途に合わせて、向いた油を使い分ける
どれが良い・悪いということだけではありません。今メインで、サラダ油を使っている方も、いきなり全部を変えなくても、だいじょうぶ。まずは、知っておいて、できそうなところから選べば十分に思います。
① 良い油を選ぶ(圧搾・遺伝子組み換えでない・容器)
油を替えるなら、そのつくられ方と原料、そして容器を見て選ぶのがわかりやすい方法です。ラベルで確認できるポイントを整理してみます。
- しぼり方は「圧搾(あっさく)」:薬品を使わず、昔ながらに圧力でしぼった油です。「圧搾」「一番しぼり」と書かれているものが目印になります
- 「遺伝子組み換えでない」の表示:原料が気になる方は、この表示や国産原料を選ぶと、自分の基準で納得して選びやすくなります
- 精製のしかた:「湯洗い」など、薬品にできるだけ頼らない精製をうたう油もあります
- 容器と保存:油は光と空気で酸化が進みます。遮光びんや缶入りは品質を保ちやすく、開けたあとは早めに使いきるのがおすすめです
すべてを完璧に満たそうと気負わなくても、まずはよく使う一本を選び直すところからで、じゅうぶんだと思います。
わたしはいま、米澤製油の「圧搾一番しぼり なたねサラダ油」を使っています。圧搾でしぼり、湯洗いで精製した、遺伝子組み換え混入防止管理済みの油で、缶に入っています。じつはこれ、名前は「なたねサラダ油」。さきほどの「サラダ油は精製油の総称」という話のとおり、圧搾でていねいにつくられたサラダ油もある、といういい例です。
缶を選んでいるのは、光や空気を遮って酸化を防ぎやすいから。イタリアでも、オリーブオイルをはじめ油の保存容器には缶がよくすすめられていて、小さな缶に入ったものがよく販売されています。ちなみに、このサラダ油は、近所のスーパー(オーゼキ)で買えるので、特別に取り寄せなくても続けやすいのもうれしいところです。
② 使う量や頻度を見直す
もうひとつの方向が、そもそもの使う量や頻度を、すこし見直してみること。油を替えなくても、使う場面を減らせば、その分だけ気になる部分は小さくなるはずです。
たとえば、揚げ物や炒め物の回数をほんのすこし控えてみるだけでも、油を使う量は変わってきます。「良い油に替える」だけでなく「使う場面を選ぶ」のも、りっぱなひとつの答えです。
わたし自身は、じつはサラダ油をふだんほとんど使いません。使うのは揚げ物をするときくらいで、それも数えるほど。その揚げ物にも、サラダ油ではなく菜種油や米油を選んでいます。特別なことをしているつもりはなくて、蒸したり焼いたりの料理が多いと、自然と油をたっぷり使う場面が少ない、というだけなんです。
炒め物や目玉焼きのときも、フライパンに油をしくことは滅多にありません。必要な油分は、火を止めてから、もしくはお皿に盛り付けてから、仕上げのオイルとしてかけています。
もちろん、これはあくまでわたしの場合。毎日の料理でサラダ油が活躍している方も多いと思いますし、それがいけないということはありません。使う頻度も「自分に合う距離」でいい、という一例として読んでいただけたらうれしいです。
③ 料理ごとに油を代える
3つめは、料理によって、向いている油を使い分ける方法です。無理にひとつの油にしぼる必要はなく、加熱する料理と、生で使う料理で油を分けると、おいしさも栄養のバランスもとりやすくなります。どんな油が何に向くかは、次の章でくわしく紹介します。
サラダ油の代わりになる油|用途で選ぶ

ここでは、料理ごとに使い分けたいときの代表的な油を、向く料理の目安とあわせて紹介します。大豆油・とうもろこし油はサラダ油の主原料でもあるので、「代わり」というより、違いを知って使い分ける参考にしてみてください。
| 油 | 特徴 | 向く料理 |
|---|---|---|
| なたね油(菜種油) | くせが少なく使いやすい。発煙点が高め | 炒め物・揚げ物・ふだん使い全般 |
| こめ油(米油) | あっさり。酸化しにくく、揚げ物がからりと仕上がる | 揚げ物・炒め物・お菓子 |
| エクストラバージンオリーブオイル | オリーブの実を低温圧搾し、フルーティーな香りと、ポリフェノールなどの栄養成分を保持。発煙点はやや低め | 炒め物・ドレッシング・仕上げ |
| 大豆油 | くせが少なく、サラダ油の代表的な原料のひとつ。リノール酸(オメガ6)が多め | 炒め物・揚げ物(オメガ6に偏らないよう使い分け) |
| とうもろこし油(コーン油) | 軽く香ばしい風味。ビタミンEを含み加熱に強い。これもオメガ6が多め | 炒め物・揚げ物・お菓子 |
| えごま油・亜麻仁油 | オメガ3が豊富。熱に弱く酸化しやすい | 生で。納豆・サラダ・スープの仕上げ |
選ぶときは、加熱する料理と、生で使う料理で分けて考えるとわかりやすいです。炒め物や揚げ物には、発煙点が高く扱いやすいなたね油やこめ油。えごま油や亜麻仁油は熱に弱いので、加熱せず仕上げにかけて、オメガ3を補うのに向いています。
エクストラバージンオリーブオイルについては、酸度が「0.8%以下」と国際オリーブ協会(IOC)によって厳格に規定されています。これを超えたものは「エクストラバージン」とは名乗れず、ひとつ下の等級の「バージンオリーブオイル」(酸度2.0%以下)になります。酸度は低いほど鮮度が高い目安で、最高品質のものは0.1〜0.3%ほど。豊かな風味と高い栄養価が保たれています。ラベルや商品説明で酸度を公開している作り手もあるので、選ぶときのひとつの手がかりになります。
なお、日本のJAS規格は国際基準とは異なり、エクストラバージンの区分がありません。表示だけでは見分けにくいこともあるので、ヨーロッパのオーガニック認証マーク(ユーロリーフなど)も、選ぶときの判断材料になります。
イタリアで暮らしていた頃、オリーブオイルについて印象に残っていることがあります。
普段イタリアでは、料理には驚くほどたっぷりとオリーブオイルを使います。ところが、揚げ物にはひまわり油や落花生油を使うのが一般的でした。
最初は単純にコストの問題かな、と思ったのですが、わたしがイタリアで教わったのは、「オリーブオイルは発煙点が比較的低いため、揚げ物にはあまり向かない」という考え方でした。ひまわり油や落花生油にも一番しぼりのような上質なものがあり、油は性質に合わせて使い分けるもの。その考え方に、イタリア人の食へのこだわりを感じたのを覚えています。
その経験から、わたしも油は用途によって使い分けています。オリーブオイルは高温になりすぎないよう水分のある料理を中心に使い、揚げ物にはなたね油や米油を選んでいます。
「オリーブオイルは酸化しやすいから」ではなく、「発煙点が比較的低めだから」と理由を分けて考えると、油の使い分けがぐっとわかりやすくなります。
サラダ油の上手な使い方|オメガのバランスと、酸化させない保存

油は「たくさん使う」ものというより、種類とバランス、使う量、そして鮮度を意識すると、無理なく付き合えます。
- オメガ6に偏りすぎないように:現代の食事は、サラダ油や加工食品からオメガ6を摂りやすいと言われます。青魚やえごま油・亜麻仁油などからオメガ3を意識して摂ると、バランスがとりやすくなります
- 加熱と生で使い分ける:炒め物・揚げ物には熱に強い油、仕上げには熱に弱いオメガ3の油、と役割で分けます
- 使う量も気にかけてみる:油は「たっぷり」が正解とはかぎりません。少なめでもおいしく作れる料理は多いので、使う量をゆるやかに意識してみるだけでも変わります
- 酸化させない保存を:油は光・空気・熱で酸化します。コンロのそばに置きっぱなしにせず、冷暗所で。開封後は早めに使いきります
- 揚げ油は使い回しすぎない:何度も使った油は酸化が進みます。色やにおいが変わってきたら替えどきです
こうして見ると、「サラダ油は体に悪い」と身構えるより、自分に合う距離で、いい油を、新鮮なうちにバランスよく使うほうが、ずっと前向きで続けやすい付き合い方だと感じます。完璧をめざさなくても、できるところから少しずつで十分です。
「サラダ油は体に悪い?」についてよくある質問
サラダ油は加熱しなければ大丈夫?
加熱しないほうが酸化は進みにくいですが、油は光や空気、時間でも酸化します。生で使う場合も、新鮮なうちに使いきるのがおすすめです。とくに、揚げ物に何度も使い回した油は酸化が進んでいるので、生食には向きません。
オリーブオイルならサラダ油より安全なの?
オリーブオイルは酸化に強い油ですが、「これさえ使えば安心」という万能の正解油があるわけではありません。とくにエクストラバージンは発煙点が低めなので、高温の揚げ物にはなたね油やこめ油のほうが向きます。料理によって使い分けるのが、いちばん現実的です。
サラダ油を減らしたいけど、料理は成り立つ?
だいじょうぶです。炒め物を蒸し料理や煮物にしたり、揚げ物を焼くやオーブンに替えたりすると、油をたっぷり使う場面は自然と減ります。無理にゼロにする必要はなく、使う場面を選ぶだけでも変わります。今の使い方が心地よければ、無理に変えなくてもだいじょうぶです。
キャノーラ油とサラダ油は違うもの?
キャノーラ油は、なたね(菜の花の仲間)からつくる油の呼び名です。一方サラダ油は、JAS規格で定められた精製油の総称で、なたねもサラダ油の原料のひとつ。重なる部分もあるので、まったくの別物というより、呼び方と分類のちがいと考えるとわかりやすいです。
結局、どの油を買えばいい?
毎日使うなら、まずは「圧搾」「遺伝子組み換えでない」と書かれた、なたね油やこめ油を一本選んでみるのがおすすめです。生で使うえごま油や亜麻仁油を一本足すと、オメガ3も補えます。全部をいきなりそろえなくても、できるところからで十分です。
まとめ|サラダ油は、自分に合う距離で付き合える
サラダ油は、名前だけで「体に悪い」と決めつけるものではありません。理由と事実を知っておくと、必要以上に身構えずにすみます。
- 「サラダ油」は精製油の総称。圧搾・遺伝子組み換えでない、ていねいなつくりの油もある
- 気をつけたいのは、溶剤抽出の精製油をかたよってたくさん使い続けることと、酸化
- 「認知症になる」「トランス脂肪酸が多い」といった噂は、今ある事実からは行きすぎな面がある
- 付き合い方は「良い油を選ぶ・量や頻度を見直す・料理ごとに代える」の3つ。どれでも、組み合わせても自由
身構えて避けるのではなく、自分に合う距離で。そう思えると、油との付き合いがすこし軽くなります。いい油を選ぶのも、使う場面を減らすのも、料理で使い分けるのも、どれもが正解なんです。まずは次に油を買うときや料理をするとき、ひとつ気にかけてみるところから、ぜひ試してみてください。
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